Success Story: DFコーター Direct Fountain Coater

カーテンコーターは塗布量が少なく、ノズルで塗料を垂れ流すコーターとして知られていましたが、従来の空気の乱流発生、塗膜の不均一、また機械的振動によるカーテンの不安定さにより塗布が困難であったため製紙業界には利用されていませんでした。
IHIフォイトビジネスプロフェッショナルマネジメントは、従来の問題点を解決し、カーテン塗装技術を応用技術にしたダイレクトフountainコーター(DF: Direct Fountain)を開発し、全世界にすでに29台のカーテンコーターを納入。このコーターは実際に稼働しており各国の製紙業界から高い評価を得ています。

DFコーターの塗布原理

DFヘッドに供給された塗料はポンプにより循環され、濾過することなく直接ノズルに送られます。このノズルから塗料の流れは垂直方向に落下し、ノズル開口部で安定したカーテン状の流れを形成します。
このカーテン流は、基材が通過する際に基材とともに移動し、基材に塗布されます。
基材上に供給された塗料は全て塗布されるため、塗料の回収率を向上させることで塗布量を正確に制御することができます。



カーテンコーターによる塗布(模式図)

理想的な均一塗布

従来のスロット(ダイ)コーターではアプリケーターローターで塗料を基材に塗布するとその粘性、およびその後スロット(ダイ)で膜厚を制御するまでの間の基材張力、さらにスロット(ダイ)で膜厚を制御するときのスロット(ダイ)隙間による塗料の基材への接触抵抗が生じました。ブレード式の場合ブレードから塗料が基材に移るときのブレード圧力により塗料の基材への浸透が生じました。これに対し、DFコーターでは塗料のカーテンが基材に触れるだけなので、外力で塗料を基材に浸透させることはなく、基材の張力で塗料が接触する程度です。したがって理想的な均一塗布(Contour Coat)が可能です。






DFコーターの特徴

DFコーターは非常にシンプルで理想的な均一塗布であることにより、従来のコーターに比べ以下の多くの特徴があります。

(1) 操作性が良い。またメンテナンス性も非常に運転しやすいコーターです。
A. 塗料のフィルターまたは塗料のバルブの調整が不要。
B. スロット、ダイ、ローラー等が不要なため、それらの保守の必要がない。
C. 塗布量は塗料の回収率を向上させればよく、調整に精度が必要ない。
D. 機械の清掃が非常に容易である。
(2) 高品質な塗布が可能です。
A. 機械方向(CD)、機械直角方向(MD)の塗布均一性が高い。
B. 塗布量にストライプ、オレンジピールの発生がない。
C. 均一塗布(Contour Coat)のため塗布による表面品質向上の効果がある。
(3) 経済的効果が高い。
A. 塗料回収率が非常に高いため塗料の設備コスト低減でき、塗料ロスが少ない。
B. スロット、ダイ等を使用しないため消耗品のコストがかからない。
C. スロット、ダイ、ローラー等が不要なため、それらの洗浄に必要な水、それらのための廃液がない。
D. 塗布均一性が高いため塗布による表面改善効果があるため塗布量を減らすことが可能である。そのためコストと量の削減ができる。
E. 基材への塗料の浸透がないため紙品質が向上し、またスロット部で基材が引っ張られることがなく断紙が発生しにくい。そのため生産性が向上する。



カーテンコーター塗布時の写真
カーテンコーターの将来の展開

塗料希釈の不要な溶剤塗布に広く利用されると考えられる。特に粘度が非常に高い塗料の塗布にその特徴を発揮すると考えられる。また原理的に塗布が容易であるため高速度の運転をしている既存コーターに応用できると考えられる。
多色塗装はカーテンヘッドを2基直列配置した多色塗装(タンデム型タンデム塗装)、またはスプレーガンとカーテンヘッドによる多色塗装が可能となる。また、カーテンヘッドを既存コーターヘッドに適用したアップグレード型コーターも可能である。


Direct Fountain Coater

   
  Success Story: 高濃度パルパー IntensaPulper

Voithグループは、2006年より革新的な性能を持つ高濃度パルパーシステム(商標:Intensa Pulper)の販売を開始した。販売開始2年間で日本を含む全世界から18台を受注し、そのうち10台は既に稼働に移されている。本技術は、VPITで2年間にわたり試験開発したもので日本の製紙技術奨励賞(Japan TAPPI)から技術賞を2008年に授与されました。
製紙設備の中で最初に位置するパルパーの性能を向上させることはシステム全体の効率化に大きく影響し、システム全体の消費電力単位を低減するだけではなく、システム全体の設備コスト低減に寄与するものです。実際に従来型高濃度パルパーに比べIntensa Pulperは、最大50%の消費電力単位を低減可能です。
従来のバッチ式高濃度パルパーは、市場に出て50年が経過し、その間にマイクロプロセッサーによる自動化等の進歩はしていたものの、Intensa Pulperのような革新的技術はなかったと自負しております。



Intensa Pulperは、高濃度パルパーにおける製紙プロセスの物理化学的挙動、「繊維化」、「バッチ化」、「滞留化」、「洗浄化」という4つの要素から分析して開発された。
簡単に説明すると、性能を向上させるには繊維の塊を高濃度に保つことが重要である。しかしながら、従来型の場合、高濃度にするとスクリーンの目詰まりが発生しやすくなるため、「繊維化」、「滞留化」、「洗浄化」という別の要素に対して妥協しなければならなかった。結果的に見ると「性能が発揮できない」、「効率が上がらない」のである。
Intensa Pulperが画期的な能力を発揮できたのは、高濃度にしても従来型のように「性能が発揮でき」、「効率が上がる」という、これまでの低濃度パルパーの常識を覆す性能を実現しているからである。

Intensa Pulperのメカニズムは以下の四つの点である。
(繊維化促進)

1. パドル形状……パドルが繊維塊を完全に分散させずに(繊維状に)攪拌するようになっている
2. ローター形状……特殊形状のローターの採用
3. ローター径……攪拌能力が従来型の2倍以上
4. 槽内表面仕上げ……攪拌面積、攪拌効率が従来型の約2倍



高濃度パルパーの評価

パルパーの消費電力単位は、単に生産量に対する電力消費量だけでその性能を評価することはできない。容積が大きく、モーター容量が大きくて電力を消費するだけでは、芯の分散能力が向上しても意味がなく、単位消費電力でどれだけの性能を発揮できるかを示す「性能単位」という概念を用いてパルパー能力は評価すべきである。

「性能単位(kWh/T)」
=「電力消費量(kWh/D)」÷「生産量(T/D)÷濃度(%)×100」

高濃度パルパーの性能単位は従来のパルパーの半分である。つまり、真の意味での「省エネルギー」「能力アップ」を実現したということである。

高濃度パルパーのもう一つの特徴は、小型のパルパーで大量のパルプ生産ができるため、パルパーシステムの設置、省スペースなどが可能となる。パルプストックポンプの電力消費の削減だけでも大きなメリットをもたらすが、高濃度パルパーはパルパー出口の濃度を意図的に下げることができるため、一次の精選スクリーンは不要となるなど、従来のパルプ製造システムそのものを大きく変えることができる。

例えば、現在の古紙パルプ製造システムの消費電力単位(パルパー以降)は100〜130kWh/Tまで低下している。高濃度パルパーの登場により、100kWh/T以下の消費電力単位で古紙パルプを製造できるようになる。


Intensa Pulperの導入効果は、以下の通りである。
1. Saving Energy : パルパー単体による著しい省エネルギー
2. Increasing production: 最小設置面積のパルパーで最大生産
3. Improve quality : 最小設置面積のパルパーで高品質化
4. Saving investment cost: 既存設備にパルパーを増設できる


 

IntensaPulper



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